Information

竣工年/2023年

所在地/音更町

用途/個人住宅+アトリエ

床面積/110㎡

構造/木造二階建て

施工/株式会社 おかげさま

※おかげさまと協同設計

写真/Ikuya Sasaki

Concept

自然に囲まれた場所でパン屋を営むご家族の住宅です。

建設予定地には古い木造牛舎が建っており、牛舎の記憶を残したいというところからプロジェクトは始まりました。

牛舎の解体時に出た古材には美しい職人の手の跡と歴史が残っており、「古材に可能な限り手を加えない状態で利用する」というテーマをもとに進めました。


実際に古材1本1本に時間をかけて向き合うと、状態が同じものなど1本もありません。

長い年月を経た古材は唯一無二の風格を持っており、可能な限り手を加えずにもう一度構造材として再利用することが、素材に対する敬意であると考えました。

一般的な屋根構造は一定の間隔で材料を組むことで作られていますが、今回は古材1本1本の強度を確認し構造計算をかけることで、一見無作為に見える屋根が生まれました。


屋根構造の他にも、余った短い古材同士を継いで生まれた校倉造の収納と水廻りの箱を、それぞれ家の中央に置きました。

この配置により、箱の間にできる「すきま」でひとりひとりが居場所を探して暮らす空間構成が生まれました。

これは障子などによりはっきりと空間を区切らない、日本的な場の作り方です。


また、このプロジェクトは未完の設計図をもとに進みました。

すこしづつ形になっていく建築、そして素材を感じながら実施設計を行いました。

住宅の隣に建つカシワの木の枝は皮を剥き手摺に、階段を支える梁はエゾマツを斜めに架け、お施主さんが山で刈った丸太を柱として生かす。

これは、設計と施工を行き来し続けたことでしか生まれなかった、良い意味で泥臭い住宅です。